ネジをプリントしてみよう。

締結の碇石、ネジ!

機械業界で仕事をしていると、複数パーツを締結することは日常茶飯事です。
締結の方法はいろいろありますが、金属部品の場合ネジでの締結がもっとも多いでしょう!
ちなみに、むりやり叩き込む圧入や熱変形を利用した、焼きバメ、冷やしバメ、などもあります
3Dプリンターの一般的な樹脂の場合には、接着が多いのでしょうか?
でもネジの場合、再利用や取付け取外しなども可能なので、機構的は部品を作る場合にはネジは重宝します

ネジをモデリング

Fusion360でネジを描くのは、非常に簡単ですね~
円柱や穴を描いて、<作成><ネジ>で、<モデル>にチェック。<寸法を選択>するだけですね~
会社で使っているCADではこうは行きません。
ネジの断面を描いて、ネジのピッチに合わせた螺旋スプラインを描いて、
それに沿わせるようにスイープ機能で3D化して円柱から引き算する方法です

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 非常に面倒!Fusion360で始めてネジコマンドを見た時、びっくりしました。
図面用に、イメージだけ描いてくれるCADもありますが、モデルまで描けるのは始めてでした

やっぱり、市販の金属のネジにも合うように汎用的に作りたい

3Dプリンターで「おねじ」「めねじ」両方とも作る場合であれば、ピッチや寸法などネジの規格に合わせる必要はないです
ただ、規格の寸法でつくれば、汎用的な市販の金属ネジとも共有できるので、いろいろと便利です
樹脂と金属、どちらにも、取り付けられるようにしたいですね
特に、私のプリンターはPLA樹脂しか使えないので、硬いですが弾性力がなくて、割れやすいです
以前にも作った事がありますが、金属ネジと組み合わせると結構硬くて、無理すると割れてしまいました。
壊れやすい方を金属にする事もできます

プリンターの精度の確認

国内で一般的なネジの規格はメートルネジと呼ばれていて、よく使われるのは、

  • M3×0.5
  • M4×0.7
  • M5×0.8
  • M6×1.0
  • M8×1.25
  • M10×1.5
  • M12×1.75

ぐらいでしょうか・・・
そんな中でも、3Dプリンターで樹脂で作成する場合には、M6~M12が使いやすと思いますので
まずは、ネジ径と同じ凸凹の形状をプリントして、プリント精度を測定してみたいと思います。

はめあい

軸と穴を組み合わせる場合、その関係を「はめあい」と呼びます
その関係とは、主に凸と凹の隙間になり、クリアランスとも呼ばれています
このクリアランスが一定であるほど、精度良く組み立てる事ができますし
リアランスを小さくすると、硬く結合できます
ネジを製作する場合も同じですね。
精度が悪いと入らなかったり、ガタガタで抜けてしまったりしますね~

Fusion360 のパラメータ機能はすごい!

プリント精度測定用のモデルを用意します。
モデルはFusion360 で作成しました。円の凸凹なので、簡単です

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精度確認が目的なので、数種類寸法も変えてプリントしたいと思います
ここで、Fusion360には、パラメータと言うすごい機能がありますので、これを使ってみます

  • ます、スケッチで20mm×20mmの四角を描きます
  • 次に、中央にφ8の円を描きます
  • これを、左右どちらか干渉しない位置へコピーします
  • 押し出しと結合、切り取りを使って、穴と軸を作成します

これで、終了ですが、穴径はネジの種類に合わせて、φ6、φ8、φ10、φ12と作ります
なので、モデルは穴径だけ違うモデルを描きたいですが、ここでパラメータを使うと便利です
「モデル」>「修正」>「パラメータを変更」と進むと、上の画像のようなダイアログが出ます
ここで、モデルパラメータで穴径の「8mm」のところを変更してもいいですが
もう少し後日や他人でも分かりやすいように、「ユーザーパラメータ」を使用してみます
「ユーザーパラメータ」横の「+」をクリックすると、「名前」と「式」を入力できるダイアログが開きます
ここで、「名前」を「径」にして、「式」には「8」を入力し「Enter」します。
自動的に「8mm」になります。
その後「モデルパラメータ」の「式」が「8mm」になっている穴径の場所を、「径」に変更します
これで、終了です。
次回からは、「ユーザーパラメータ」の「径」の「式」の値を、6,10、12などに変更すれば
モデルも変化してくれます。本当、便利な機能ですね!
 これから、ネジのモデリングもしたいと思いますが、そちらでも、このパラメータ機能を使用してモデリングしたいと思います

デフォルト充填率でプリント

この結果は、あくまで、私の「FlashForge Finder」での精度になります
もし、お時間あれば、お持ちののプリンターの精度を確認しておいてもいいと思います

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こんな感じです。プリント条件は私のプリンターの標準条件:積層ピッチ0.18 充填率15%です。
凹穴はそうでもないですが、凸は円筒のプリント時に樹脂を出し始めるスタート位置付近がコブっぽくなっています
そのコブ部分は外して測定すると

  • φ6:穴 φ5.8-φ5.9:軸 φ5.8-φ5.9
  • φ8:穴 φ7.8-φ7.9:軸 φ7.8-φ7.9

少し小さいですが、穴も軸をだいたい同じ寸法で、思ったよりもいい精度です。
コブの部分は、幸い凸形状の場合だったのでよかったです
「やすり」で削り取るとある程度、形は整えられると思います
ちなみに、簡易的な測定には、ノギスを使います。
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今度は100%の充填率でもプリント

充填率15%では、そこそこの精度でプリントできたので、これなら「おねじ」「めねじ」を普通にプリントすれば、金属市販ネジとも共有できそうに思います
ただちょっと思っているのが、ネジを締めこむ場合、経験的に充填率が15%と低いと壊れやすい気がします
充填率の違いによる精度も確認したいので、今度は、充填率100%でプリントしてみます。

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 う~ん、充填率15%よりも、コブが大きくなったような気がします。

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 ここでも、コブの部分は外して測定してみました

  • φ6 :穴 φ5.6-φ5.7 :軸 φ6.1-φ6.3
  • φ8 :穴 φ7.6-φ7.7 :軸 φ8.0-φ8.2
  • φ10:穴 φ9.7-φ9.8 :軸 φ9.8-φ10.1
  • φ12:穴 φ11.3-φ11.4:軸 φ11.8-φ12.0

ほうー、充填率を上げたほうが、プリント精度は悪くなるみたいですね~
ちなみに、コブにあてて、径を測ると1mmぐらい出っ張っています。
それに、穴と軸の寸法に対する出来上がりも、違ってきてます
穴はネライに対して、小さくできてますが、軸は逆に大きくなってます
径との比率になるか?とも思っていましたが、そうでもなさそうですね
穴は、径に対して0.2~0.5mm程度小さくて、軸はほぼネライで出来ている感じです
推測ですが、充填率を大きくすると、樹脂は部分的な量は多くなって、膨れる傾向にあるのでしょうか?
形状も穴は小さめながら径は安定してますが、軸は歪です
たぶん、これでは、ネジをプリントしても入らないかもしれないですね
印刷スピードを変えると、また精度も変わるかもしれませんね
とりあえず、次回はネジ(ボルト、ナット)のモデリングをして印刷してみます